秋刀魚(サンマ)


何と言っても秋を代表する魚は秋刀魚でしょう。北の海から南下を始め、秋が最も脂がのっておいしい時期です。ちょうど銚子沖まで下りてきたころが秋刀魚の旬です。

8月には北海道根室沖でサンマの操業が始まりますが、その頃のさんまの脂肪は全体の約1割程度です。10~11月の銚子沖で脂肪は2割程度になり、一番おいしい時期になるのです。

落語に目黒の秋刀魚という演目がありますが、

~晴れわたった秋の長閑な日に、殿様が家来を伴って遠乗りがてら、目黒不動参詣に出かけました。目黒についたころちょうど昼近いころで、農家の台所から秋刀魚を焼くいいにおいが漂ってきました。

家来に「このいい匂いのものを食したい」といわれ、家来は農家へ行って焼きたての秋刀魚を譲ってもらいました。殿様はお腹がすいていたこともあって、忘れられない味となってしまったのです。

城へ戻ってからは以前と変わらぬ食事が続くのですが、何とも物足りなさを感じていた時、親戚の御呼ばれに出かけることになりました。

親戚では「何かお好きな料理があればなんなりと申しつけてください」と言われたので、すかさず「秋刀魚が食べたい」と言って驚かせたそうです。

秋刀魚は町人が食べる魚とされていただけに、驚いた親戚は、日本橋の河岸へ出向いて最上級の秋刀魚を手に入れました。

脂が多く小骨も多いため、十分に蒸して油を抜き、小骨も丁寧に取り払ってダシガラのようになってしまった秋刀魚を出しました。

殿様は驚いて「これが秋刀魚と申すか、間違いではないのか?」脂が抜けてパサパサの秋刀魚がおいしいわけはありません。

「この秋刀魚はいずれより取り寄せたのじゃ?」「日本橋の魚河岸にござります」
「あ、それはいかん。秋刀魚は目黒に限る」~

目黒の区民祭りでは、「目黒の秋刀魚祭り」が行われています。目黒は海に面していませんが、目黒と言えば秋刀魚が思い浮かぶほど、有名な落語なのですね。

※ ※ ※

詩人佐藤春夫の「秋刀魚の歌」も有名ですね。

あはれ 秋風よ 情(こころ)あらば伝へてよ
・・・男ありて 今日の夕餉に ひとり
秋刀魚を食らひて おもいにふける と。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・
この後、さんま、さんまと続く詩です。

佐藤春夫が谷崎純一郎の妻千代への同情が恋心に変わり、結局千代は谷崎と離婚して、佐藤春夫と結ばれることになりました。

「秋刀魚の歌」はまだ谷崎の妻であった千代とその娘、佐藤春夫の3人で食事をする食卓に秋刀魚が上った時をうたった詩です。

※ ※ ※

秋刀魚は鱗があるのでしょうか。

秋刀魚にも鱗はあるのです。秋刀魚が泳いでいる時はきれいな鱗がついているんですよ。しかし私たちが魚屋で眼にする秋刀魚には鱗がありません。

秋刀魚の鱗はとても薄く、はがれやすいのです。サンマ漁は殆ど棒受け網漁や刺し網漁のため、網の中でサンマ同士がこすれ合うことで、鱗が殆どはがれてしまうのです。

そのため店頭に並んだ秋刀魚には、はじめから鱗がないような、つるっとした状態になっているのです。

「秋刀魚焼く ほかに工夫も あらぬげに」    本城布沙女
「秋刀魚焼く 煙公害沙汰の世に」        奥村鷹尾
「貧農は 昔秋刀魚も 食えずなり」       八木葉子

 

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