マグロの資源保護を第一に…マグロあれこれ(その3)


1980年代以降、我が国のマグロ漁を取り巻く厳しい環境について前項で綴りました。
近年では、クロマグロ、ミナミマグロ、タイセイヨウクロマグロに対してワシントン条約を発効して完全に禁漁化という声が欧米方面から挙がっているほどです。

マグロが食べられなくなる日が来るとセンセーショナルな報道がある位、日本人のマグロに対する関心が強いのです。
その一方で、欧米を中心に世界では日本がマグロを大量に買い漁っているという風潮があるのも確かです。
事実、高級寿司屋では時価で高嶺の花だったクロマグロやミナミマグロの大トロが、回転寿司屋でリーズナブルな値段で食べられるようになりました。

現在、日本ではマグロの安定供給を図りつつ、マグロ資源の維持及び回復に向けて官民一体となって取り組んでいます。

地中海やメキシコ、オーストラリアでは若魚や成魚を飼育して太らせる畜養が古くから盛んです。
しかし畜養は資源保護よりは、太らすことで商品価値を上げる狙いのほうが強く見受けられます。

1970年に近畿大学でマグロの養殖実験を開始します。
実験場は和歌山の串本と鹿児島の奄美大島で実施されました。
天然魚を捕獲して畜養することとは異なり、クロマグロ採苗の人工ふ化を行い、仔魚・稚魚育成、成魚になるまで管理飼育の実現を目指します。
しかし、クロマグロの種苗生産は今までに経験したことがないほど難しいものでした。
まず、ふ化後の歩留まりの悪さに悩まされます。
クロマグロの成魚が1,000万粒採卵しても、成魚になるのは1尾だったのです。
ふ化後、日齢7日の段階で大半の仔魚が死んでしまいます。
生き残った稚魚が自立して摂餌行動をとる頃、激しい共食いが発生してしまうのでした。
ふ化後2か月を経過すると、稚魚は20センチ以上に成長しますが猛スピードで回遊するので水槽に激突して死亡する個体が多発しました。
日齢30日以降水槽飼育から海中の生け簀に移されますが、ここでも網に引っ掛かったり、激突して死亡する個体が絶えませんでした。
クロマグロは高度回遊魚であるので常に動き続けることと、光に対して非常に敏感でパニックを起こしやすい傾向があるのです。

これらの問題を解決するのに32年の時間を要しました。
2002年6月、ようやくクロマグロ完全養殖の商業化が実現したのです。

卵から成魚になるまで0.1%だった歩留まりを3%まで押し上げました。
これまでマグロの稚魚の餌は生餌のみでしたが、2008年に近大と豊田通商の子会社によって配合飼料が開発され、クロマグロ養殖産業化に弾みがつきます。
2011年には稚魚中間飼育の歩留まりが35%まで達しました。

2014年に近大と業務提携を拡大した豊田通商がクロマグロの大量生産を行うと発表します。
採卵や仔魚飼育を行うセンターを長崎県五島市に開設しました。
2020年にはクロマグロ生産量を現在の年80トンから240トンに増やすとしています。

販路も日本国内以外にアメリカ、アジア方面へ輸出を計画中です。

美味しいマグロが枯渇しないためにも、様々な研究が日々されているのです。

 

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