魚の体温と水温 その5

さて前回は金魚が自分自身で最適な水温を調整する行動をすることを綴りました。
魚類は生活するうえで最適な水温の範囲内の水域を選び、かつ体温は水温とほぼ同じです。
しかしこれには当てはまらない魚種の魚たちもいるのです。

「第3話」で触れましたが、マグロやカジキ、サメなど一部の魚の体温は水温よりも数℃から10℃も高いのです。
水温に関係なく、ある一定の体温を保つことができるのです。
体の各部分にサーミスターセンサーを取り付けて体温を同時測定すると、赤みを帯びた体側筋の中央部で体温が最高になっていました。

これらの魚が高い体温を維持する理由、魚の体側筋の中を走る血管の配列にあります。
マグロなど高速で常に泳ぐ魚は皮下の血管系が非常に発達しており、そこから体側筋の中に向かってラジエーターのように動脈と静脈の末端に向かう枝状の血管が交互、または平行に並んで網上に拡がっています。
これらの血管の配列を“奇網”といいます。
奇網は代謝熱が蓄積して温まった静脈血と、エラから取り込んでやってきた冷たい動脈血がここですれ違って流れることになります。
そのため静脈血の熱は絶えず動脈血に移動して、体側筋の中心部は常に高い温度で保たれます。
つまり、筋肉の中に熱交換装置が備えられているようなものです。
ただしこの奇網周辺の部分だけが高温で、エラでの熱損失は他の魚と変わりがありません。

マグロやカジキ、サメなどは昼夜を問わず大洋を泳ぎ続けますが、これらの魚は体温が高い方が運動エネルギーを得やすいのです。
温度が10℃高くなると、筋肉の伸び縮みは約3倍に加速されるので、同じ規模の筋肉でも約3倍もの力を得ることができます。

クロマグロは長距離を高速で回遊することで有名な魚です。
水温が30度近いバハマで標識を付けて放流したマグロが、50日足らずで7,500キロメートル離れた水温5℃のノルウェー・ベルゲン沖の北海までやって来たことがあるのです。
こんな長距離を高速で泳ぎ続ける体力を支えるものは、優れた高体温保持装置が体内にあるからなのです。
水温数℃の非常に冷たい海の中でも、クロマグロは筋肉の最高温度を約28℃に保つことができるのです。

画像出典元:http://cyclothone.blogspot.jp/2016/01/673.html

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魚の体温と水温 その4

魚の体温と水温 その6

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