卵の孵化

昨年、千葉県の女子高生が殻を割った食用卵を使って、雛に孵すことに成功したニュースがありましたね。
コップに入れた“生卵”を孵卵器に入れて実験をしたところ、5日目に心臓が形成、1週間後には杯盤が変化してひよこに形成されつつあります。
そして3週間目には体のほとんどが出来上がり、遂には元気なひよこが誕生したのです。
これまで、殻を破ってひよこが生まれて来るものだと思っていましたが、殻がなくても必要な条件さえ整えばひよこが孵るのですね。

産まれたてのひよこの上嘴には白くイボのように尖った突起がありますが、これを「卵歯(らんし)」といいます。
孵化期になると卵の殻の中のひよこは、卵歯でさかんにつついて殻を割って外に出てゆきます。
卵から孵化すると卵歯の役目はもう終えているので、成長とともに自然に消えてゆきます。

さて魚類の卵についてですが、卵の中の仔魚には“卵歯”はありません。
そもそも孵化したての仔魚にはまだ口が形成されていません。
孵化をする仔魚は体をくねくね動かして、するりと卵膜から抜けてゆきます。
正確には“孵化”とは中の胚が卵膜を脱ぎ捨てる過程のことを指します。
魚類では孵化をするときに、卵内の仔魚からタンパク質分解酵素が分泌され卵膜を溶かします。
内側から溶かしてゆくと次第に卵膜の殻は薄くなってゆき、遂には相当柔らかくなってゆくのです。
そのとき、中の仔魚が少し体を動かしただけで卵膜が破けるのです。

上智大学理工学部ではメダカを用いて孵化時に発生する“孵化酵素”の研究を行い、2種類のタンパク質分解酵素が作用することで卵膜の殻が破れることを突き止めました。
1つの酵素(高卵膜分解酵素:コリオリシンH:HCE)が卵膜の特殊な構造のみを限定して分解します。
すると、もう1つの酵素(低卵膜分解酵素:コリオリシンL:LCE)が、HCEによって分解した卵の膜を分解するのです。
これらの酵素は卵膜を分解するために機能が特化されているものですが、魚種ごとに特異性を持っているため、他魚類の卵膜は分解をしません。

上智大学では卵膜の分解する過程のメカニズムを突き止めるため、“孵化酵素”基質の卵膜タンパク質と孵化酵素そのものの相互について研究をしています。
そして、様々な魚種の孵化酵素を調べるにつれて、孵化するときの卵膜の分解は、2つの酵素(HCE, LCE)が機能的に作用して行っていることが判明しました。

将来的には孵化酵素の制御によって、養殖魚の効率的な生育管理ができるとしています。

画像出典元:http://tokuze.livedoor.biz/

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