ミクロなおはなし…ナンノクロロプシス その2


前回は魚類の種苗生産現場に於いて“ナンノクロロプシス”という植物プランクトンが仔稚魚飼育で必要なことをお話しました。
今回はその続きです。
ナンノクロロプシスという植物プランクトンは、水産生物の食物連鎖ピラミッドでは最下位にあるため魚類の飼育にあたっては相当な量が必要になることを前回で綴っています。
ナンノクロロプシスはまず“種培養”から始めなければなりません。
それは種を作らずそのまま大規模水槽でナンノクロロプシスを培養したとき、何らかの不調があったときは全てが無くなってしまうという危険性が孕んでいるためなのです。
元種となるナンノクロロプシスは小さなフラスコで行い、滅菌処理を行った綺麗な海水で培養します。
通常、元種の培養液1ml内には1,000万個体のナンノクロロプシスが存在します。
ナンノクロロプシス元種はその後10リットルほどの水槽に移し替えます。
この水槽ではエアレーションがなされており、常に飼育水を撹拌して水質の状態を安定させておき、順調に増殖したナンノクロロプシスはさらに大きな数十トン単位の巨大な水槽に移されます。
基本的にナンノクロロプシス培養の大型水槽は屋外に設けられていることが多いのです。
その理由として、光合成をすることがナンノクロロプシスの安定した増殖の条件で必要となるためです。
屋外水槽に移されたナンノクロロプシスはお日様の光を浴びて、硫酸アンモニアや過リン酸石灰などの肥料で増殖を続けます。
培養液1ml内に2,000万個体程度に達した状態で種苗生産の飼育水や、ワムシの餌として回収されます。
この培養では、培養液内に原生生物が混入しないように気を付けなければなりません。
肥料撒きをした作業員の長靴にワムシが付着していたために、培養水槽がたちまちワムシで埋め尽くされたという事態がありました。
魚類の種苗生産で手いっぱいなのに、更に手間が掛かるナンノクロロプシス培養をするのは本当に大変です。
その声を拾った水産飼料メーカー、クロレラ工業(株)は濃縮したナンノクロロプシス溶液(濃縮淡水クロレラ)を開発しました。
この濃縮淡水クロレラを直接仔稚魚飼育水槽やワムシ培養水槽に投入することができるので、大幅な手間の省力化に繋がりました。
現在では多くの種苗生産機関や養殖業でこの濃縮淡水クロレラが利用されています。
スケールの大きなミクロのおはなしでした。
画像出典元:http://cypselurus.exblog.jp/13344202

 

ミクロなおはなし…ナンノクロロプシス その1

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