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新緑の深い山々の沢に沿うように流れる美しい渓流。澄みきった冷たい水は、川底の砂礫や落ち葉がくっきり見え、大きな岩の隙間まではっきりと見えるほど、きれいな澄みきった流れです。これを渓流と呼ぶのがいいのか、谷川と呼ぶほうがいいのか迷いますが、とにかく人里離れた谷川に、ヤマメ(山女または山女魚)は棲んでいるのです。

子供の頃、おじいさんに連れられてヤマメ釣りに出かけたことが懐かしく思い起こされました。昔のこととて釣竿も竹を切って枝を落とした竿を使い、エサは畑を掘り起こしてシマミミズを缶詰の空き缶に入れて餌として持っていきました。

山の中はとても静かで、谷川のせせらぎと、ホトトギスと野鳥の声しか聞こえません。ヤマメ釣りに出かける前におじいさんは私に次のように気を付けることを教わりました。

ヤマメはとても臆病で敏感な魚だから、人影が見えないようにそーっと釣り糸を垂らすこと。もう一つは大声を出したはいけない。ヤマメを警戒させないよう細心の注意をするように。最後に川下から川上に向かって竿をだすこと、と注意されています。

ポイントに着いて、言われた通り静かに竿を出し、白い鳥の羽を目印にして、じっと羽を見つめていました。おじいさんは早くもヤマメを釣り上げました。餌を付け替えてまた川上にそっと竿を出しています。

私のほうは川下まで流れたものを何度も川上へ戻していました。そのうちに白い鳥の羽が見えなくなりました。「やった」と思ったら川底にたまっていた木切れに引っかかっていたのです。

気を取直して何度も挑みました。すると今度は羽がぐいっと沈み込み、竿にぐっと重みが加わりました。竿をたてると手にあの何とも言えない大物の手ごたえがググッと伝わりました。感動です。思わず大声で「おじいさ~ん、釣れたよ~」と叫んだことを思いだしました。

釣果はそこそこあったと記憶しています。家に帰って囲炉裏でヤマメを串で刺し、焼いてもらって食べたことが懐かしく思い起こされます。

今でも田舎へ帰ればヤマメ釣りはできるでしょうか。スーパーでヤマメが並んでいるのを目にしたことはあります。体長は30㎝ほどでしょうか。体の側面に木の葉状の模様が入って、白身のさっぱりしたおいしい魚です。

私が釣ったのは今から何十年も前のことですが、この当時は本物のヤマメだったはずです。今では養殖された繁殖魚を川に放流しているらしく、純粋なヤマメは数が減っているようです。

ヤマメは流れが速くきれいな水で水温も低いところに棲んでいるため、身のしまりがいいのです。ヤマメは持ち帰ると家人から歓迎されました。

また、ヤマメは秋に産卵し、今では漁協や自治体が管理する河川では、10月から4月までは禁漁期間にして、ヤマメを保護しているのだそうです。

ヤマメはサケ科の一種で、東日本では多くのヤマメが川を下り海へ出て、大型のサクラマスになります。西日本では海へ下らずに川で生きるものをヤマメと呼ぶのだそうです。
そしてヤマメは昔も今も高級魚とされているのです。

「清流に 見えている影 山女かな」 稲畑汀子さん
「山女跳ね 峡の日射しを 散らしけり」 横森みゆきさん
「あかあかと 炭火を煽り 山女焼く」 中村悦子さん

山女を詠んだ俳句はたくさんあります。春先の魚と思っていましたが、季語は「夏」です。

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