2015-06

伊佐木(いさき)

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イサキは釣り人に人気の魚です。夏の海釣りで楽しませてくれる魚ですね。本州の中部以南の沿岸部に生息して、体長は最大50センチほどになります。イサキの釣れる期間は冬場の極寒気をのぞいてほぼ年中釣れますが、釣りの最盛期は5~7月ごろがいいですね。

潮通しの良い岩礁域を好んで生息しています。産卵は5~8月ごろで、稚魚のころは浅い藻場に群れています。成魚になると日中は海底付近を泳ぎ、夜は海面近くにやってきてエサを摂ります。そのためイサキは夜釣りに適した魚といえるでしょう。

イサキの旬は晩春から夏にかけて。産卵後の晩秋から春にかけても美味しくいただけます。特に冬季のものは脂がのっています。刺身や塩焼き、煮魚でもおいしい魚ですね。イサキの開きも格別な味のようですよ。

イサキは漢字で書くと「伊佐木」「伊佐幾」「鶏魚」と書かれます。
由来は「班魚」つまり班紋、縞模様のある魚という意味から来ています。

地方によって呼び名が変わりますが、
「いさき」は鹿児島県での呼び方のようです。
「いさぎ」は三重県尾鷲周辺、和歌山市、徳島県愛媛県で呼ばれます。
「いっさき」は熊本県天草の呼び方です。

大分県大分市佐賀関では、「関イサキの一夜干し」というのがあります。速吸の瀬戸の荒波にもまれたイサキは、特に「ハンサコ」と呼ばれています。旬は麦の収穫時期のため、「麦バンサコ」と呼ばれる脂が乗り切った開きの一夜干しです。関アジや関サバと同じようにイサキのブランドです。

ほかにも長崎県小値賀(おぢか)町で獲れる「いさき」は、「値賀咲」(ちかさき)というブランド名になっています。一尾ずつ「値賀咲」というタグがついています。

イサキは癖がなくどんな料理にも利用できます。塩焼きや刺身が代表的な料理ですが、煮つけやムニエル、揚げ物も大変おいしくいただけます。

漁師さんはイサキは「水なます」が一番といいます。イサキを3枚におろして、皮を引き、小骨を丁寧に取り除き、サイの目切りにします。味噌、長ネギ、大葉、生姜と一緒にたたいてなますにし、丼に氷水を入れた中に浮かせて食べるのです。口の中に清涼感がいっぱいに広がるようですよ。

イサキは6~7月に卵を持っています。この卵をバターで炒めたり、醤油と酒で煮るとこれも最高の漁師料理になるようです。

イサキには不飽和脂肪酸を含む資質が含まれており、成人病の予防に効果がある白身魚です。ビタミンAが成長発育や、皮膚、粘膜の状態をよくしてくれます。カリウムも多く含まれており、血圧を下げる効果も期待できますよ。

「いさき食ふ 海に六部の 入陽かな」    榎本好宏
「いさき焼く 上品の身の 焦がさずに」   鎌田治子

 

生魚がおいしいわけのヒ・ミ・ツ!

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世界広しといえども、日本人ほど生で魚を食べる人種はいないようです。そのため日本では魚のうまみを追求し、生で食べる調理法を昔から研究してきた民族です。

生で食べる方法としては、「刺身」「洗い」「たたき」「すし」があり、加熱調理しないものでは「酢のもの」「和え物」があります。

生魚のおいしさの理由は、口当たりと噛んだとき溶出してくるエキス成分の味によるのです。おいしさの最大の原因であるエキス成分について調べてみました。

エキス成分中のうまみ成分はグルタミン酸のようなアミノ酸や、鰹節の味で知られるイノシン酸その他さかな特有の味を生かすグリコーゲンや脂質、タンパク質が関係してまろやかさと濃厚な味を出しているのです。

魚は死ぬと死後硬直します。その後熟成して筋肉は柔らかくなり、タンパク質が酵素の働きによってアミノ酸やペプチド酸などのうまみ成分を生成します。魚は死後しばらくするとイノシン酸が増えておいしくなるのです。

テレビなどで見ていると、漁師さんが釣った魚をその場でさばいて刺身として食べるシーンを見ますが、刺身は筋肉が硬くてゴムのようで、本当のおいしさではないようです。

つまり熟成されていないため、アミノ酸やイノシン酸などうまみ成分があまり生成されていないということです。魚の洗いや、魚の生き造りは、筋肉の弾力のある歯触りを楽しむ料理です。

ヒラメやタイのような白身魚の刺身はあっさりしており、マグロやカツオなどの赤身魚の刺身はしつこく感じるのは、エキス成分中の非タンパク態窒素分や、イノシン酸など核酸関連物質の含まれる量によって違いが出ます。

赤身魚は非タンパク態窒素分や、カルノシンが多く、白身魚にはこれらが少ないのです。またマグロやカツオにはイノシン酸の含量が多く、ヒラメにはそれほど多くないのも、赤身魚と白身魚の味の差に関係しているのです。

魚料理店で水槽に泳ぐ鯛を見て、その場で生け造りとして料理してもらうと、新鮮さに感動するものですが、魚本来のうまみはまだ出ていないものを食べているということですね。

漁師さんも最初から魚のうまみを知っていたとは思われません。最初は獲れたての生きのいいものがおいしいとされていたのではないでしょうか。

しかし料理人が研究に研究を重ねて、本来の魚のうまみを追求して今に至ったのではないかと思います。魚本来のうまみと本物の味をこの舌に味あわせたいものですね。

 

渓流の女王ヤマメ

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新緑の深い山々の沢に沿うように流れる美しい渓流。澄みきった冷たい水は、川底の砂礫や落ち葉がくっきり見え、大きな岩の隙間まではっきりと見えるほど、きれいな澄みきった流れです。これを渓流と呼ぶのがいいのか、谷川と呼ぶほうがいいのか迷いますが、とにかく人里離れた谷川に、ヤマメ(山女または山女魚)は棲んでいるのです。

子供の頃、おじいさんに連れられてヤマメ釣りに出かけたことが懐かしく思い起こされました。昔のこととて釣竿も竹を切って枝を落とした竿を使い、エサは畑を掘り起こしてシマミミズを缶詰の空き缶に入れて餌として持っていきました。

山の中はとても静かで、谷川のせせらぎと、ホトトギスと野鳥の声しか聞こえません。ヤマメ釣りに出かける前におじいさんは私に次のように気を付けることを教わりました。

ヤマメはとても臆病で敏感な魚だから、人影が見えないようにそーっと釣り糸を垂らすこと。もう一つは大声を出したはいけない。ヤマメを警戒させないよう細心の注意をするように。最後に川下から川上に向かって竿をだすこと、と注意されています。

ポイントに着いて、言われた通り静かに竿を出し、白い鳥の羽を目印にして、じっと羽を見つめていました。おじいさんは早くもヤマメを釣り上げました。餌を付け替えてまた川上にそっと竿を出しています。

私のほうは川下まで流れたものを何度も川上へ戻していました。そのうちに白い鳥の羽が見えなくなりました。「やった」と思ったら川底にたまっていた木切れに引っかかっていたのです。

気を取直して何度も挑みました。すると今度は羽がぐいっと沈み込み、竿にぐっと重みが加わりました。竿をたてると手にあの何とも言えない大物の手ごたえがググッと伝わりました。感動です。思わず大声で「おじいさ~ん、釣れたよ~」と叫んだことを思いだしました。

釣果はそこそこあったと記憶しています。家に帰って囲炉裏でヤマメを串で刺し、焼いてもらって食べたことが懐かしく思い起こされます。

今でも田舎へ帰ればヤマメ釣りはできるでしょうか。スーパーでヤマメが並んでいるのを目にしたことはあります。体長は30㎝ほどでしょうか。体の側面に木の葉状の模様が入って、白身のさっぱりしたおいしい魚です。

私が釣ったのは今から何十年も前のことですが、この当時は本物のヤマメだったはずです。今では養殖された繁殖魚を川に放流しているらしく、純粋なヤマメは数が減っているようです。

ヤマメは流れが速くきれいな水で水温も低いところに棲んでいるため、身のしまりがいいのです。ヤマメは持ち帰ると家人から歓迎されました。

また、ヤマメは秋に産卵し、今では漁協や自治体が管理する河川では、10月から4月までは禁漁期間にして、ヤマメを保護しているのだそうです。

ヤマメはサケ科の一種で、東日本では多くのヤマメが川を下り海へ出て、大型のサクラマスになります。西日本では海へ下らずに川で生きるものをヤマメと呼ぶのだそうです。
そしてヤマメは昔も今も高級魚とされているのです。

「清流に 見えている影 山女かな」 稲畑汀子さん
「山女跳ね 峡の日射しを 散らしけり」 横森みゆきさん
「あかあかと 炭火を煽り 山女焼く」 中村悦子さん

山女を詠んだ俳句はたくさんあります。春先の魚と思っていましたが、季語は「夏」です。