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秋サバの美味しい食べ方

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秋茄子は嫁には食わすなという諺がありますが、同じような言い回しで、「秋鯖は嫁には食わすな」という諺もあります。

封建的な家族制度の中で、言われてきた諺ですが、秋の茄子が大変おいしいので、もったいないから嫁には食べさせないという姑の嫁いびりに使われた諺です。

解釈の仕方で、茄子は体を冷やす作用があり、種も少ないので子宝に恵まれないから大切な嫁には食べさせたくないという、意味合いにもとれると言われます。本当に思いやりなんでしょうか。

しかし、秋鯖に関して考えれば、前者の嫁いびりで使われた諺のように聞こえます。それほど秋鯖は美味しいということですね。

鯖は全国各地で水揚げされ、日本では大変なじみのある魚です。鯖の旬は「秋」です。
秋鯖と呼ばれて9月から11月にかけて一番おいしいとされる時期です。

鯖は春ごろ伊豆沖で産卵し、餌を食べながら北海道沖まで北上します。産卵のために南下を始めるため、脂の多い北海道沖、八戸沖、三陸沖、常磐沖、銚子沖、伊豆沖の順序で旬が移ります。

鯖はスズキ目サバ科サバ属・グルクマ属・ニジョウサバ属に分類される魚の総称です。日本近海ではマサバ・ゴマサバ・グルクマ・ニジョウサバの4種類が生息しています。

■秋鯖の魅力

①豊富な秋鯖の栄養

・鯖には健康に欠かせない栄養素が多く含まれています。
ビタミンA、B1、B2、ミネラルやカルシウムがたっぷり詰まっています。
鯖の血合にはビタミンAとEがあり、貧血の予防には欠かせない鉄分が含まれているのです。

・DHAとEPAは特に注目したい栄養素です。青魚の中では他に類を見ないほど多くの含有量です。健康を維持するために欠かせない必須脂肪酸です。

血中の中性脂肪やコレステロール値を下げ、血流を良くすることで動脈硬化を防ぐことができます。DHAやEPAを上手に摂取するには、鮮度の良い旬の魚を食べることです。

②鯖のダイエット効果も見逃せません。

特に旬の秋鯖には痩せるホルモンGLP-1が効果的に分泌される効果があります。
GLP-1が多く分泌されている人は痩せています。逆にGLP-1の分泌が少ない人は痩せにくい体質になります。

青魚に多いEPAが、小腸でGLP-1を出す細胞を刺激して、GLP-1を大量に分泌させる作用があるのです。鯖缶ダイエットなども話題になりましたね。

③秋鯖のいろんな料理
・塩焼き
・煮つけ
・シメサバ
・揚げ物
・刺し身
旬の鯖は身が肉厚で、脂がのって最高においしい時期です。
脂と酢がとてもよく合い、鯖のうまみを引き出すシメサバ。鯖は調理法と調味料の組み合わせで幾通りもの料理ができます。

■鯖を食べるときの注意

アレルギー症状は鯖によるものではなく、鯖に寄生する寄生虫によるアレルギー反応と、アレルギー様食中毒の2種類があります。

①蕁麻疹などアレルギー症状が出る。

刺身やシメサバを食べる時、寄生虫アニサキスに注意が必要です。アニサキスは加熱(60℃1分)や冷凍(-20℃以下)で死滅します。
アニサキスは地域によって種類が違うため、生食習慣のある地域の鯖に寄生する種類は、比較的安心できるようです。
生食用を買う場合は、適切な冷凍処理されて解凍したものなら問題ありません。

②アレルギー様の食中毒

アレルギー様の食中毒は、鯖に限ったことではなく、赤身の魚で起こります。カツオやイワシなどでも起こるわけです。

理由は筋肉中に含まれるアミノ酸の一種、ヒスチジンが含まれていますが、鮮度が落ちるにつれ酵素をもった細菌が増殖します。これによりヒスタミンを作り出し、アレルギー反応に似た症状を発症するのです。

秋が旬の美味しい秋鯖は、買い物したら保冷剤をもらい、帰ったらすぐに冷蔵庫で保存しましょう。また、生食しないものはきちんと火を通すなどして、注意しましょう。

EPAやDHAなど不飽和脂肪酸は、酸化しやすいので、鮮度の良いものを手に入れ、早めにいただくよう心掛けましょう。

 

オレに触れた者はケガするぜ…カマス

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何だかちびっ子ギャングみたいなタイトルになってしまいましたが、決して大袈裟なことではありません。
見た目はスマートで細い魚ですが、顎を開けると鋭い歯が並んでおり、少し触れただけで切れてしまう怪我を負うことがあります。
しかもこの歯、普段は寝かしていますが餌になる魚を捕食するときは歯がちょうつがい状に立ち上がるという機能性に富んでいるのです。

カマスは太平洋、インド洋、大西洋の熱帯、温暖な海域に生息し、サンゴ礁や岩礁の周辺で群れを成して行動します。
日本付近では、西日本以南の沿岸にアカカマス、ヤマトカマス、オニカマスが主に生息しています。

オニカマスに至っては体長が2メートルを超える個体もあり、鋭い歯の鬼のような顔の巨大魚は恐怖心さえ感じます。
泳ぐスピードは時速150キロに達し、獰猛な性格のオニカマスは餌となる魚類を執拗に追い回し、狙った獲物は逃がさないハンターです。
獰猛な理由はカマスの消化器は短く、すぐに餌を消化してしまうので、絶えず空腹状態にあるとのことです。
ときに人に対しても襲いかかり、大怪我をした人が世界中に何人もいます。
地域によってはサメより危険と言われることがあり、海外ではバラクーダと呼ばれ恐れられている存在です。

一般的に国内で流通しているカマスはアカカマス、アブラカマスとも呼ばれます。
体長はオニカマスよりもぐっと小さく50センチ前後、釣りの定番魚ですがハリスが鋭い歯で切られてしまうことがよくあります。
漁では定置網や延縄で漁獲されます。
秋から春が旬の季節で、脂がよく乗っており塩焼きにすると大変美味しいです。
アカカマスは鮮度がよければ刺身で美味しく食べられます。
天ぷら、唐揚げ、フライ料理に抜群で、また日干しにして干物にするとアミノ酸やイノシン酸が増えて、より深いカマスの旨みが楽しめます。
魚肉に少量の塩を足して摺ると弾力性のあるすり身になり、蒲鉾などの原材料としても最適です。

ヤマトカマスはアカカマスより身の水気が多いので生食には向きませんが、干物にするとたちまち香ばしい味が口いっぱいに広がります。

さて、海のギャングことオニカマスですがこちらは食べるのは控えましょう。
特に熱帯域に生息するオニカマスは捕食する魚が食べた餌の動物プランクトンが毒性となり、オニカマスがシガトキシンという毒に汚染されてしまいます。
これを食すると眩暈や吐き気、下痢、発熱など食中毒症状が発生します。
また、シガトキシンは熱に対しても耐性があるため、一般的な調理方法では毒を分解することができません。
以前はオニカマスが鮮魚店やスーパーで売られていたこともありますが、食品衛生法により現在は販売が禁じられています。

アカカマスの塩焼き、今年は食べたいです。
さかま図鑑で執筆を始めてから、すっかり食べたい魚が増えてしまったワタクシでございます。

画像出典元:http://www.nankaiso.com/cgis/blog/

 

鮟鱇(アンコウ)

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鮟鱇は今も昔も高級魚として人気のある魚です。白身で淡白な味でカロリーは低いが、アンコウ鍋としてなくてはならない魚です。

産卵を終えた7~8月を禁漁とし、肝が大きくなる11~2月ごろが一番おいしい時期です。
茨城県では底引き網漁によってアンコウを漁獲しています。

鮟鱇の産地は福島県から茨城県にかけてが有名な漁場ですが、近年では山口県下関での漁獲量がトップの座を占めています。

西のフグ、東の鮟鱇といわれ、秋から冬にかけての味のオオサマです。下関ではフグも鮟鱇も日本一となり、冬の2大味覚として名を馳せていくことでしょう。

アンコウは江戸時代には「三鳥二魚」と呼ばれる5大珍味の一つとして珍重されていたようです。つる・ひばり・鷭(ばん)・鯛・鮟鱇の5種類です。これらは歴史的にも名高い高級食材です。

アンコウはそれぞれの部位ごとに味や歯ごたえが異なるため、柳肉(身肉、頬肉)・皮・水袋(胃)・キモ(肝臓)・ヌノ(卵巣)・えら・トモ(ヒレ)が食用にされ、七つ道具と呼ばれています。(「飲食辞典」平凡社昭和33年に記載)

この七つ道具と野菜を加え、味噌または醤油で味付けをしたアンコウ鍋が代表的な鮟鱇の料理です。

特にアン肝と呼ばれる肝は、ビタミンA・ビタミンB12・ビタミンD・DHA・EPAなど栄養価が高く、美味しいため海のフォアグラとも呼ばれています。

アンコウは表面がヌルヌルしているため、まな板に載せて料理することは難しいため、伝統の「吊るし切り」という解体法が採られています。

アンコウ料理には
・アンコウの七つ道具を使ったアンコウ鍋
・ドブ汁・・・鍋で生肝を乾煎りし、アンコウの具材、野菜を入れて作る鍋です。漁師たちが船の上で食べたとされる古くからの料理方法です。
・友酢(供酢)・・・アン肝や皮、身などを酢味噌で合わせたタレにつけて食べます。水戸の発祥といわれ、アンコウの一品料理として有名な料理です。

・アンコウのから揚げ・・・皮や身をから揚げにして、レモン汁をかけて食べるのが通とされています。河豚に似た食感で大変おいしい。

日本ではキアンコウ(ホンアンコウ)とアンコウ(クツアンコウ)が食用として供されています。外見はよく似ていますが、市場では区別されずに販売されます。

北海道、太平洋、インド洋、大西洋、地中海の深海に生息し、餌は主に小魚やプランクトンを捕食します。種類によっては鮫やスルメイカ、カレイ、カニなどを捕食するものもあります。

アンコウの俳句

あんかうに 一膳めしの 行灯哉      正岡子規
鮟鱇の 口ばかりなり 流しもと      高浜虚子
鮟鱇鍋 河豚の苦説も なかりけり     正岡子規
鮟鱇の 肝 うかみ出し 鮟鱇鍋      高浜虚子

 

新子(しんこ)

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夏しか食べられないのが新子ですね。6~7月に旬を迎えます。江戸っ子は新子を食べないと夏が来ないとまで言います。

夏場の限られた時期しか市場に出回りません。走りの時期にはとてつもない高値で取引されます。江戸前のすし屋では欠かすことができない寿司ネタです。

新子はコハダの稚魚ですが、東京のすし屋にとっては数ある寿司ネタの中でも最もこだわりを持って、大切に扱う魚です。

江戸っ子の気質を表す「女房を質に入れても初鰹を食べる」という意地と誇りと見栄の世界が、東京のすし屋の「新子」に対する世界ではいまだに生き残っているようです。

新子の初物としての仕入れ値は、1㎏3万円~5万円の値がつくこともあるのです。この値段が2週間ほど続くのですからすごいですね。

コハダの卸値は1㎏1000円~3000円ほどですが、3000円となると敬遠されるようになります。新子との価格差はこれほど大きいものがあるのです。

新子は生後4か月ほどの稚魚です。寿司職人は新子の初物が入ると快い緊張感を覚えるといいます。サイズが小さい繊細な魚です。

新子の仕込には寿司職人の技のすべてが集約され、寿司店の意地と誇りとメンツにかけてお客の舌を唸らせようと努力するのです。

新子は出世魚です。シンコ→コハダ→ナカズミ→コノシロと名前が変わります。
すし屋で新子が食べられるのは6~7月頃しか食べられません。

新子のおいしさを表す言葉に、「夏の初風が吹き始めるほんの数日間、新子はすし屋に登場する」という表現がなされます。

新子は体長およそ6~7㎝までの幼魚。
コハダは体長がおよそ12㎝までを言います。
ナカズミはおよそ15~16㎝くらい。
コノシロは体長が17㎝以上の成魚のことです。

新子は小さいけれど一番の高級魚です。次のコハダはぐんと値段が落ちます。その後ナカズミはもっと値が下がり、コノシロに至っては大変廉価に手に入る魚です。

新子からナカズミまではすし屋で大変な人気ですが、コノシロになると鮨には使いません。
コノシロは骨が多いが脂ののりがあって、塩焼きがおすすめのようです。

コノシロの「なれ寿司」もお勧めです。なれ寿司の本場和歌山県御坊市では、時間をかけて熟成させたコノシロを、なれずしにします。最高の「なれ寿司」を試してみたいものですね。

岡山県に「ママカリ」と呼ばれる魚がありますが、これは新子の成長した「コハダ」のことを指しています。ママカリ寿司もおいしいものですね。

新子という呼び名は、いろんな魚にあるということが分かりました。本来新子とは汎用的な呼び名であり、関西地方で新子と言えば、「玉筋魚(いかなご)」の幼魚を指します。

この新子をボイルして乾燥させると、「かなぎちりめん」となり、このかなぎちりめんを佃煮にすると「小女子(こうなご)」となります。いかなごの幼魚を生のまま佃煮にすると「いかなごの釘煮」になります。

ほかにもアオリイカの稚魚なども新子と呼ばれるようです。調べればもっとたくさんあるかもしれませんね。

画像出典元:http://narashi.blog.jp/

 

車海老(クルマエビ)

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夏のおいしい魚には「車海老」があります。中でも車海老は味の良さでは定評がありますね。「姿 伊勢海老、味 車海老」といわれるほどのおいしさです。

車海老が出世エビといわれることはご存知でしたか?魚河岸では車海老の重さが30g以下のものを「巻」、その中でも小さいものから順に「小巻」「才巻」と分けられます。それ以上のものを「車」と呼び、順に「車」「大車」と呼ばれるようです。成長とともに呼び名が変わるのですね。

天然ものの車海老の旬は6~8月、養殖物は12~2月といわれます。成長したクルマエビは体長が15~20㎝ほどです。

小さな海老は味がよく天ぷらに、大きなエビは塩焼きやエビフライに適しています。

車海老には栄養素がいっぱい詰まっています。
・豊富に含まれるアミノ酸のうち、グリシン、アルギニン、プロリン、リジンの4つのアミノ酸が3割を占めています。肌の水分や油分、弾力を保つコラーゲンの主原料です。

・殻にはキチンという不溶性食物繊維が含まれており、便秘の予防や大腸がんの予防、コレステロールを体外に排出する作用があります。

・ビタミンEが豊富で、活性酸素を抑える抗酸化作用があり、体内の不飽和脂肪酸の酸化を防ぎ、動脈硬化や心筋梗塞など生活習慣病予防に効果があります。

・タウリンが脳卒中や高血圧、心臓病の予防や疲労回復、視力回復に効果を発揮します。

車海老は夜行性で、昼間は砂の中に浅く潜っています。夜になると泳ぎ出てゴカイや貝類を捕食します。

車海老の生産量第一位は沖縄県です。沖縄県の車海老は陸上のいけすでの養殖と、遠浅の海岸を堤防で仕切って、自然の干満を利用した海水交換を行う築堤式の2種類があります。

エビは縁起物として昔から重宝されてきました。エビの姿を老人に見立てて、「海老」の漢字の由来となったといわれます。
お中元などの贈り物にも車海老を産地直送品として人気がありますね。

クルマエビをおが屑にくるんで地方発送されます。届いた箱を開けるとおが屑の中にクルマエビが生きたまま届いているのです。貰った方は何とも言えない嬉しさがあります。

刺身にしたり、踊り食いにしたり、その夜は車海老の話題で盛り上がること間違いなしですね。贈り物といっても天然物とは限りません。むしろ養殖物のほうが多いと思われます。

厳密に調べれば味の違いはあるのでしょうが、食べ比べない限り違いは殆どないようです。

見た目も美しく、食べてもおいしいクルマエビですが、俳句の季語には「夏」となっています。しかしクルマエビを詠んだ俳句が見当たらないのはどうしたことでしょう。

スーパーなどの店頭には、車海老は一年を通して見かけるように思います。天然物と養殖物が、季節感を薄めてしまったのでしょうか。

 

伊佐木(いさき)

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イサキは釣り人に人気の魚です。夏の海釣りで楽しませてくれる魚ですね。本州の中部以南の沿岸部に生息して、体長は最大50センチほどになります。イサキの釣れる期間は冬場の極寒気をのぞいてほぼ年中釣れますが、釣りの最盛期は5~7月ごろがいいですね。

潮通しの良い岩礁域を好んで生息しています。産卵は5~8月ごろで、稚魚のころは浅い藻場に群れています。成魚になると日中は海底付近を泳ぎ、夜は海面近くにやってきてエサを摂ります。そのためイサキは夜釣りに適した魚といえるでしょう。

イサキの旬は晩春から夏にかけて。産卵後の晩秋から春にかけても美味しくいただけます。特に冬季のものは脂がのっています。刺身や塩焼き、煮魚でもおいしい魚ですね。イサキの開きも格別な味のようですよ。

イサキは漢字で書くと「伊佐木」「伊佐幾」「鶏魚」と書かれます。
由来は「班魚」つまり班紋、縞模様のある魚という意味から来ています。

地方によって呼び名が変わりますが、
「いさき」は鹿児島県での呼び方のようです。
「いさぎ」は三重県尾鷲周辺、和歌山市、徳島県愛媛県で呼ばれます。
「いっさき」は熊本県天草の呼び方です。

大分県大分市佐賀関では、「関イサキの一夜干し」というのがあります。速吸の瀬戸の荒波にもまれたイサキは、特に「ハンサコ」と呼ばれています。旬は麦の収穫時期のため、「麦バンサコ」と呼ばれる脂が乗り切った開きの一夜干しです。関アジや関サバと同じようにイサキのブランドです。

ほかにも長崎県小値賀(おぢか)町で獲れる「いさき」は、「値賀咲」(ちかさき)というブランド名になっています。一尾ずつ「値賀咲」というタグがついています。

イサキは癖がなくどんな料理にも利用できます。塩焼きや刺身が代表的な料理ですが、煮つけやムニエル、揚げ物も大変おいしくいただけます。

漁師さんはイサキは「水なます」が一番といいます。イサキを3枚におろして、皮を引き、小骨を丁寧に取り除き、サイの目切りにします。味噌、長ネギ、大葉、生姜と一緒にたたいてなますにし、丼に氷水を入れた中に浮かせて食べるのです。口の中に清涼感がいっぱいに広がるようですよ。

イサキは6~7月に卵を持っています。この卵をバターで炒めたり、醤油と酒で煮るとこれも最高の漁師料理になるようです。

イサキには不飽和脂肪酸を含む資質が含まれており、成人病の予防に効果がある白身魚です。ビタミンAが成長発育や、皮膚、粘膜の状態をよくしてくれます。カリウムも多く含まれており、血圧を下げる効果も期待できますよ。

「いさき食ふ 海に六部の 入陽かな」    榎本好宏
「いさき焼く 上品の身の 焦がさずに」   鎌田治子

 

生魚がおいしいわけのヒ・ミ・ツ!

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世界広しといえども、日本人ほど生で魚を食べる人種はいないようです。そのため日本では魚のうまみを追求し、生で食べる調理法を昔から研究してきた民族です。

生で食べる方法としては、「刺身」「洗い」「たたき」「すし」があり、加熱調理しないものでは「酢のもの」「和え物」があります。

生魚のおいしさの理由は、口当たりと噛んだとき溶出してくるエキス成分の味によるのです。おいしさの最大の原因であるエキス成分について調べてみました。

エキス成分中のうまみ成分はグルタミン酸のようなアミノ酸や、鰹節の味で知られるイノシン酸その他さかな特有の味を生かすグリコーゲンや脂質、タンパク質が関係してまろやかさと濃厚な味を出しているのです。

魚は死ぬと死後硬直します。その後熟成して筋肉は柔らかくなり、タンパク質が酵素の働きによってアミノ酸やペプチド酸などのうまみ成分を生成します。魚は死後しばらくするとイノシン酸が増えておいしくなるのです。

テレビなどで見ていると、漁師さんが釣った魚をその場でさばいて刺身として食べるシーンを見ますが、刺身は筋肉が硬くてゴムのようで、本当のおいしさではないようです。

つまり熟成されていないため、アミノ酸やイノシン酸などうまみ成分があまり生成されていないということです。魚の洗いや、魚の生き造りは、筋肉の弾力のある歯触りを楽しむ料理です。

ヒラメやタイのような白身魚の刺身はあっさりしており、マグロやカツオなどの赤身魚の刺身はしつこく感じるのは、エキス成分中の非タンパク態窒素分や、イノシン酸など核酸関連物質の含まれる量によって違いが出ます。

赤身魚は非タンパク態窒素分や、カルノシンが多く、白身魚にはこれらが少ないのです。またマグロやカツオにはイノシン酸の含量が多く、ヒラメにはそれほど多くないのも、赤身魚と白身魚の味の差に関係しているのです。

魚料理店で水槽に泳ぐ鯛を見て、その場で生け造りとして料理してもらうと、新鮮さに感動するものですが、魚本来のうまみはまだ出ていないものを食べているということですね。

漁師さんも最初から魚のうまみを知っていたとは思われません。最初は獲れたての生きのいいものがおいしいとされていたのではないでしょうか。

しかし料理人が研究に研究を重ねて、本来の魚のうまみを追求して今に至ったのではないかと思います。魚本来のうまみと本物の味をこの舌に味あわせたいものですね。

 

渓流の女王ヤマメ

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新緑の深い山々の沢に沿うように流れる美しい渓流。澄みきった冷たい水は、川底の砂礫や落ち葉がくっきり見え、大きな岩の隙間まではっきりと見えるほど、きれいな澄みきった流れです。これを渓流と呼ぶのがいいのか、谷川と呼ぶほうがいいのか迷いますが、とにかく人里離れた谷川に、ヤマメ(山女または山女魚)は棲んでいるのです。

子供の頃、おじいさんに連れられてヤマメ釣りに出かけたことが懐かしく思い起こされました。昔のこととて釣竿も竹を切って枝を落とした竿を使い、エサは畑を掘り起こしてシマミミズを缶詰の空き缶に入れて餌として持っていきました。

山の中はとても静かで、谷川のせせらぎと、ホトトギスと野鳥の声しか聞こえません。ヤマメ釣りに出かける前におじいさんは私に次のように気を付けることを教わりました。

ヤマメはとても臆病で敏感な魚だから、人影が見えないようにそーっと釣り糸を垂らすこと。もう一つは大声を出したはいけない。ヤマメを警戒させないよう細心の注意をするように。最後に川下から川上に向かって竿をだすこと、と注意されています。

ポイントに着いて、言われた通り静かに竿を出し、白い鳥の羽を目印にして、じっと羽を見つめていました。おじいさんは早くもヤマメを釣り上げました。餌を付け替えてまた川上にそっと竿を出しています。

私のほうは川下まで流れたものを何度も川上へ戻していました。そのうちに白い鳥の羽が見えなくなりました。「やった」と思ったら川底にたまっていた木切れに引っかかっていたのです。

気を取直して何度も挑みました。すると今度は羽がぐいっと沈み込み、竿にぐっと重みが加わりました。竿をたてると手にあの何とも言えない大物の手ごたえがググッと伝わりました。感動です。思わず大声で「おじいさ~ん、釣れたよ~」と叫んだことを思いだしました。

釣果はそこそこあったと記憶しています。家に帰って囲炉裏でヤマメを串で刺し、焼いてもらって食べたことが懐かしく思い起こされます。

今でも田舎へ帰ればヤマメ釣りはできるでしょうか。スーパーでヤマメが並んでいるのを目にしたことはあります。体長は30㎝ほどでしょうか。体の側面に木の葉状の模様が入って、白身のさっぱりしたおいしい魚です。

私が釣ったのは今から何十年も前のことですが、この当時は本物のヤマメだったはずです。今では養殖された繁殖魚を川に放流しているらしく、純粋なヤマメは数が減っているようです。

ヤマメは流れが速くきれいな水で水温も低いところに棲んでいるため、身のしまりがいいのです。ヤマメは持ち帰ると家人から歓迎されました。

また、ヤマメは秋に産卵し、今では漁協や自治体が管理する河川では、10月から4月までは禁漁期間にして、ヤマメを保護しているのだそうです。

ヤマメはサケ科の一種で、東日本では多くのヤマメが川を下り海へ出て、大型のサクラマスになります。西日本では海へ下らずに川で生きるものをヤマメと呼ぶのだそうです。
そしてヤマメは昔も今も高級魚とされているのです。

「清流に 見えている影 山女かな」 稲畑汀子さん
「山女跳ね 峡の日射しを 散らしけり」 横森みゆきさん
「あかあかと 炭火を煽り 山女焼く」 中村悦子さん

山女を詠んだ俳句はたくさんあります。春先の魚と思っていましたが、季語は「夏」です。

 

高知の漁師めし~鰹のたたき~

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高知といえばまず一番に頭に浮かぶのは「鰹」でしょう。カツオは春と秋の2度にわたって旬を迎える魚です。中でも春から初夏にかけて獲れる初鰹は、季節を感じさせる逸品ですね。「目には青葉、山ホトトギス、初がつお」江戸時代の俳人、山口素堂も詠んでいます。

鰹料理といえば代表格は「鰹のたたき」でしょう。料理の起源は土佐漁師のまかない料理、つまり漁師めしとして発達しました。別名「土佐づくり」とも呼ばれています。赤身の鰹は刺身として料理されることが多いのですが、「カツオの漬け丼」や、カツオとねぎを混ぜて叩いたものに、みそを混ぜて「なめろう」として食べるのも大変おいしい食べ方ですね。

高知の鰹は表面を藁で焼くことで、独特の香りを封じ込めます。中はきれいな赤身が見た目で食欲をそそります。ニンニクやタマネギをたっぷり添えて、酢を利かせた醤油だれを振りかけて、包丁の平でたたいてタレをなじませて食べます。

たたきといっても手で軽くタレとなじませる方法と、焼いてからタレをかけて、木の棒を使って「たたく」方法と、たたく行為はしない「たたき」があるようです。
地元高知で頂いたのですが、皿に盛られたカツオのたたきを見て驚きました。

見るからにうまそうな料理なのですが、箸をつけるのをためらいました。それは上に載っているにんにくの多さだったのです。翌日に大事な商談を控えているだけに、ニンニクは控えなければいけないと自分勝手に思い込んでいたのです。

高知の友人は「高地ではにんにくのにおいを気にするような人はいない。皆食べているんだから何も気にすることはない。失礼にあたることなどありえないんだから」という言葉に背を押され、最高の皿鉢料理を頂いた記憶があります。
鰹は回遊魚です。群れを成して休むことなく高速で泳ぎ回る魚です。そのために大量の酸素が必要となり、効率よく酸素を使えるようにヘモグロビン(血液色素タンパク質)と、ミオグロビン(筋肉色素タンパク質)が多くなります。

鰹は海面付近を泳ぎ回って餌を捕食します。運動量が多いから脂質が豊富に蓄えられます。この脂質が優良な脂質であるEPA・DHAなのです。ご存知かと思いますが、DHAは脳の発育を促し、血液をサラサラにする栄養素です。EPAは悪玉コレステロールを退治し、血液をサラサラにしてくれます。赤身魚のたんぱく質は、筋肉などを作る栄養素です。

また、魚は部位によって含まれる栄養素が違ってきます。ビタミンやミネラルも豊富に含んでおり、人間にとって必要とされる栄養分をいっぱい含んでいるのがお魚なんです。そして何よりいろんな料理によって飽きることなく食卓を盛り上げてくれるのが「さ・か・な」です。明日は魚料理にしませんか?

 

青森の漁師めし『ドウグ鍋』って知ってますか?

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先日テレビの「秘密のケンミンショー」で放映されたのですが、大変興味を持ちました。青森は下北半島の漁師さんが開発した漁師めしです。下北半島では冬の定番料理になっているようです。今回の漁師めしはドウグ鍋、具材は「タコ」です。

青森県下北地方風間浦村の漁師めしは、「タコのドウグ」を食べるということでした。津軽の海ではタコが豊富に水揚げされるそうです。そのタコの内臓だけ取りだして、漁師さんたちは生で刺身として食べたり、今回のなべ料理として食べるようになったそうです。

「ドウグ」とはタコが生きるために必要である内臓を昔から「タコの道具」と呼んでいました。その種類は、腸・白子・卵巣・精きょう・胃・肺・心臓などいわゆるホルモンと呼ばれるものです。内臓は傷みが早く、殆ど生で市場に出ることはないのです。

「ドウグ鍋」は土鍋にネギや豆腐を入れて、味噌仕立てで一煮立ちさせたところへ、タコの生の内臓を入れます。触感は白子のふわふわ感あり、胃や心臓のコリコリ感、その他ムニュムニュ・グチャグチャの触感が味わえるそうです。現地の人に言わせるとまさに知らない世界観があるそうですよ。

タコの内臓は捨てるところがないらしく、栄養素も高たんぱくで低脂肪ということですから、肥満など気にせずに食べられるのがうれしいですね。ダイエット料理には最適ですね。

タコの内臓はお刺身としてもおいしいということです。わさび醤油でドウグの刺身を食べながら一杯やるのもうれしいですね。その他天麩羅やから揚げ、サラダにしてもドウグのうまさが味わえるようです。

タコやイカには人間の細胞を作ったり再生させるインスリンの成分が含まれています。感染症の予防にもなる亜鉛も含まれているため、高血糖値の人にはお勧めの食材です。

青森県ではこのようにしてドウグ(内臓)をおいしく食べる工夫を凝らしていますが、瀬戸内海の明石ダコでは内臓の話を聞いたことがありません。明石もマダコが獲れて有名な漁場です。関西ではタコの内臓料理を耳にしません。多分スーパーマーケットにも並んでいないと思います。

しかし通信販売を調べて驚きました。なんとタコの内臓(ホルモン)としてずらりラインアップされているではありませんか。よく見ると北海道の魚介販売店1社の扱いのようです。そして生ではなくボイルされた冷凍ものでした。テレビの影響を見込んでのことかもしれませんが・・・。

家庭では小さなタコは内臓が詰まったまま食べることも多いようです。すると青森のタコの道具はどうして取り出さねばならないのでしょう。内臓を食べるタコはもっと大きいのでしょうか。それとも干しダコなどにするために内臓を取り出したのでしょうか。

いずれにしても青森発の漁師めしではありますが、まだまだ知名度は低いと思われます。ケンミンショーが引き金となって、広く全国で味わえるようになれば嬉しいですね。